Co-CreationつながるPELP!(提携企業インタビュー)

2023.08.22

第四回PPM(PELP!パートナーミーティング)レポート「わが社のCSV経営」① 株式会社フォーバル 杉本様

株式会社フォーバル 上席常務執行役員 アイコン事業本部長 杉本様

CSV経営の実践について~事例と思考~

今回ご登壇いただいた株式会社フォーバル様(以下、フォーバル様)は1980年に創業し、以来情報通信コンサルティングと経営コンサルティングの二軸を中心とした様々な事業を展開する中で、現在では中小企業の経営支援(アイコン事業)にも注力しています。1万人の経営アドバイザー創生と10万社の支援を目指し、日々全国的なアクションを起こし続けているフォーバル様の取組み事例などを中心にご共有いただきました。

いま企業に求められているものは?

現代において企業は様々な社会要請への対応が求められています。「GX」、「DX」、「SDGs」、「ESG」、「健康経営」、「人的資本」….このような様々な言葉が飛び交う中で、表面的にその言葉に翻弄されるのではなく、自社の経営を高めていく上でなぜそれを行うのかという点を大切にし、フォーバル様では情報通信や経営の角度からお客様へのアプローチを行い、伴走支援を行っています。

今回は、そんなフォーバル様がこれまでどんなことに取り組まれてきたのかをご紹介いただきました。2008年にスタートし、現在は公益財団法人「CIESF(シーセフ)」として活動を継続しているカンボジアへの支援活動がそのひとつです。
創業者でもある同社の大久保会長は、当時カンボジアではまだ「教育」というソフトが出来上がっていないことに着目し、そこから基礎教育の質の向上と人材育成に取り組まれています。
ここで大切なのは、”こういうことをやっている”、ではなく”なぜこういうことを始めたか”であると杉本様。
同社では日本の人口減に伴い、消費・労働人口が減っていくと一国で持続できる状況ではなくなることを15年前から憂慮していたそうです。自社で着手できる地域、そして支援を求めている地域はどこかを検討した結果、ASEAN地域、その中でもカンボジアに至り、現地の教師を教育する為に日本の定年退職した教師を派遣する「国境なき教師団」を2008年に立上げました。これを皮切りに、起業家の育成や、国立大学の日本語学科設立にも尽力。そして現在最も注力しているのが2016年に開校した「CIESF Leaders Academy(シーセフ リーダーズ アカデミー)」での取り組みです。
幼中小の一貫教育に加え、高校からは日本での高度教育を提供し、母国や日本、世界で活躍できる未来のリーダー育成を目指しています。
将来はその教育を受けた人材の子どもたちにもそのサイクルを繋げ拡げることで、日本が抱える人口的課題を「教育」というソフトコンテンツで解決する為の活動を始めています。

取組みが社内にもたらす好影響

前述したような社会課題解決への取り組みが社内にもたらす好影響にも触れていただきました。
社員のモチベーションアップにはじまり採用応募数アップ、新規顧客獲得数アップ、顧客との関係性強化、企業価値アップ。そして事業拡大など、2008年の「CIESF」発足以降、同社は数々のポジティブな影響を受けてきたそうです。

同社の海外事業展開においては、カンボジアを皮切りにベトナム、インドネシア、ミャンマーと拡大し、「CIESF」を契機に繋がったことを活かしフォーバル社の本業で進出。現地での雇用も創出し、現在は168名の方がフォーバル社員として従事されているとのこと。
「CIESF」発足当時の2008年はリーマンショックが起こるなど、厳しい環境ではあったものの、その中でも大きくイノベーションを図ったことで、上記の様に目に見える好影響に繋がったと捉えています。
現在はそうした自社での活動背景を基に、その経験を中小企業向けにダウンサイジングして伝えることを主軸とし、約42,000社のクライアント様に向け活動しています。

GDX化にはCSV経営思考が必要である

PPMの参加者には経営層の方も多いことから、このような観点もご共有くださいました。

新しいお客様は、既存のお客様は どこにいますか?
社員は、融資してくれる銀行は、就職希望者はどこにいますか?
=世の中(地球)にいます。

上記の問いより、どうすれば【世の中】から選んでもらえる企業になるかを考える中で、特に中小企業は「社会」「金融機関」「マーケット」「社員」「就活者」の5つの観点が重要だと指摘します。
これらの視点を踏まえフォーバル様では、創業当時からの実践型コンサルティングに加え「アイコンサービス」という中小企業に向けたGDX化の伴走支援を通して、その活動をさらに加速させるための様々な機会提供を行っています。

『SDGs Each together』という考え方で新しい世界を

現在フォーバル様では「きづなPARK」というコンテンツを活用し、各社のESGスコアリングやDX推進度、財務指標などを可視化してスコアアップコンサルティングを行っています。
会員企業のデータから、DXスコアが高い企業は、ESGスコアも高く、非財務ESGレベルが高い企業は財務レベルも高い傾向が読み取れます。

フォーバル様では約15年前から大久保会長が「共感」、「共鳴」を生み出す『CRM(コーズ・リレーティッド・マーケティング』を提唱しており、その実践の為には①社会性②独自性③経済性の順番で物事を考えていく必要があると指摘しています。
企業が接する外的要因(社会性)と内的要素(独自性)をうまく取り入れ差別化を図り競争優位性を確立していくことが自ずとSDGsに貢献していく、そしてこの取り組みこそがGDX化でありフォーバル様の取組みです。

企業の大切な経営要素として、人、モノ、カネ、情報、時間とありますが、それに加え、「共創パートナー」が大切であると杉本様は仰いました。

“SDGs Each together”

それぞれができることを宣言し、繋がることで共創展開を拡げていく考え方です。例えば、山陽製紙との共創展開がPELP!の提携であり、2022年11月時点で801団体の会員を増やしており、次はこの801社を新たな取り組みで繋いでいきます。

CSV経営を実践するにはどのような思考をベースとし、いかに行動を社会へ発信・表現していくことが重要か、という点を自社の取組みならびにコンサルティングに携わった企業様の事例などと共に、多角的にご紹介いただいたフォーバル様のご共有でした。

株式会社フォーバル 企業公式サイト

CSV経営の実践のために

CSV(Creating Shared Value)は日本語で「共有価値の創造」などと表現されますが、これはビジネスが社会的な課題に対して取り組む手法やアプローチを指す概念です。
「ハーバード・ビジネスレビュー(2006年12月号)」誌において、マイケル ・ポーター氏とマーク・クラマー氏の共著による論文において、従来のCSRからCSVへの転換について記述しています。
彼らは、単に利益追求だけでなく、企業が社会的な価値を共有することが重要であり、ビジネスと社会的な課題を統合的に考えるべきだと主張しました。
CSR(社会的責任)においては、必ずしも事業の業績や経済的利益を追求することを目的としていませんでしたが、CSVでは経済的価値(利益の獲得)と社会的価値(社会的課題の解決)の両立が前提となっています。
CSVの中にCSRの観点が内包されていることから「攻めのCSR」という言い方をされることもあります。

近年多くの日本企業でもSDGsやサスティナビリティといった文脈の中で「CSV経営」という言葉を聞く機会が増えてきました。
今回事例を共有いただいたフォーバル様でも、創業以来培ってきたコンサルティングの知見を活かし様々な社会課題解決への取り組みを行い、事業として経済価値を創出しています。

わたしたちが事業において社会課題の解決と経済価値の両立に向けて考える時、どのように整理すればよいのでしょうか。
前出のマイケル・ポーター氏はCSVの3つのアプローチについて、以下のように定義しています。

(1)「製品と市場を見直す」
自社の製品に社会課題を解決できるポテンシャルはないか?また培ったノウハウにより、社会課題を解決できる製品づくりができないかを考えてみましょう。
また、自社が存在している市場を見直すことも重要です。
フォーバル社の講演では、縮小市場から市場を変え自社の強みと社会課題解決が合致したことで新たな経済価値を創出した実例もご紹介いただきました。

(2)「バリューチェーンの生産性を再定義する」
バリューチェーンとは企業において多岐にわたる各事業活動を価値創造のための一連の流れとして捉える考え方で、これもマイケル・ポーター氏の提唱によるものです。
例えば製造業では原材料を加工し製造する活動がありますが、例えば製造過程の電気消費を抑制したり原材料の見直しを行うことで社会価値(環境負荷の低減等)、企業価値(生産効率向上等)の両立を図ることができます。
具体的な見直し項目として、「エネルギーの利用とロジスティックス」、「資源の有効活用」、「調達」、「流通」、「従業員の生産性」、「ロケーション」等が挙げられています。

(3)「企業が拠点を置く地域を支援する産業クラスターをつくる」
「産業クラスター」とは、地域の産官学が連携し相互の連携や競争、共創を通じて新たな付加価値を創出する、という概念です。
自社の企業価値向上のため生産性やイノベーションに影響を与えるクラスターを形成することで、社会的な課題の解決につながることが期待されます。
しかし労働者が搾取されたり、サプライヤーに適正価格が支払われなければ当然ながら生産性の悪化を招くため、クラスターの形成には透明性が必要です。

日本においては2001年度に政府事業として「産業クラスター計画」がスタートしましたが、政権交代により2009年に次年度以降の予算が打ち切られてしまい、地域の産業クラスターづくりの難しさが浮き彫りになっています。
しかし国の政策に依らず地域発の取り組みを行う事例もあり、地域との結びつきが強い中小企業にも多くのチャンスがあるのではないでしょうか。

日本の企業におけるCSV経営の実践はまだ進展途上であり、多くの課題も存在します。
しかし、迅速な意思決定が可能な中小企業だからこそ、社会的価値と経済価値を両立させるサービスや製品開発を率先して行うことで、選ばれる企業になることは間違いありません。

パートナーシップで循環型社会へ

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